『デビューアルバムに佳作あり』とは、個人的な思い。1stアルバム「STOMPi and Swing Labo」もその思いに連なる1枚。
 スイング・ジャズ研究所と称するバンドの結成から今に至るまでの、人知れず重ねてきた研究と実験の賜物?とはいえ、その成果である音楽は、軽快、無垢、新奇。「スイング・ジャズとは何か」などと、苦心する研究所ではないようだ。
 デビュー当初からライブ会場にしているのは、前田が永く暮らす東京郊外の小さな街 ”国立” の酒場。ライブステージのMCで、ピアニカ前田は自らを所長と称し、メンバーは部長や優秀な研究員である、と紹介するのは、前田らしいユーモアとして、ギターの石井マサユキ、ウッドベースの清水光一の愛すべき演奏は、このバンドの快調なハーモニーとリズムをキープしている。
 谷殿明良、小島麻由美、ハッチハッチェル、ゲストの三人もバンドの音となって溶け込み、佳きアンサンブルを聴かせてくれる。彼等は古き良き時代のそれではなく、あくまでもこの時代のスイングを希求しているようだ。
 青春ジャズ・ピアニストの修業時代から、ベーシストの松永孝義とジャズクラブで演奏していた頃、ピラニアンズ、松竹谷清等々の活動を通して音楽を育んできた前田が新しいバンドを結成したのだから、「今一番やりたいこと」がここに在るのだろうと思う。その要因のひとつは、ボーカル・ウクレレのストンピを見出したこと。
 ある日、前田から「ストンピは、松竹谷清から歌を学びたい、と言っている」と聞いたことがある。ライブでキレのいいウクレレを弾き、歌いながら、タップダンスをさりげなく披露するストンピは、青空を映す水たまりで跳ねる子供のように活きる。
 初めてライブを観た時から、「STOMPi and Swing Labo」は世界の街や村に響く音楽だ、と思っている。

2017年6月 こだま和文

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